ハトムギCRDエキス -はと麦きれいプロジェクト-

はと麦の説明

● 多彩なハトムギの有用性

1.免疫かつ作用

江戸末期の『経験千万』という書物には、「イボをとるには、ハトムギのお茶を飲むとよい」と記載されています。ハトムギが疣贅(イボ)をはじめ、伝染性軟属腫(水イボ)に効果があることに関して、わが国では多くの論文がみられ、症例報告としても、尖圭コンジローマという厄介なイボに対する有効性も報告されています。作用機序についても徐々に解明されており、免疫賦活作用(免疫活性化作用)が関与していることが指摘されています。溝口らはヨクイニン(子実の熱水抽出エキスで漢方薬名)が単球-マクロファージ系細胞に作用し, インターロイキン-1の産生増強を介して抗体産生細胞を増強することを報告し、金田らはヨクイニン内服により NK 細胞活性と MHC 非拘束性細胞障害性 T 細胞の増強を認めています。また、ヨクイニンによって細胞傷害性 T 細胞が活性化し、抗ウイルス作用がもたらされるとする報告もみられます。

2.肌に対する作用

ハトムギがサメ肌などに効果があることは古くから知られ、中国では古代宮廷料理の代表的食材だったようです。台湾出身の女優リンチーリンさんも、美の秘訣はハトムギと十分な水を飲むことだとインタビューに答えています。しかし、ハトムギの肌改善作用は、日本、韓国、台湾等では知られているものの、欧米ではほとんど知られていないのが現状です。我々は、ハトムギCRDエキス(殻付ハトムギの熱水抽出物)による2重盲検臨床試験を実施し、ハトムギが顔面皮膚の色素や紅斑度を減少し、いわゆる透明感のある肌となることや肌荒れ、爪の状態を改善することを報告しました。さらに、シミのうち肝斑にも有効であることも示しました。なお、ハトムギはメラニン色素の増加を防ぐことが、他の研究者から報告されています。今後はハトムギ、なかでもハトムギ外皮の抽出物摂取が肌美容に有用であるとするきちんとデザインされた臨床試験が増えてくると思われます。

3.にきび

ようじょうくん」で有名な江戸時代の医師かいばらえきけんが編纂した『大和やまとほんぞう』には、「ひどいニキビにはハトムギを煎じて飲むと効果がある」と書かれています。我々の自験例でもニキビが大変改善した例があります。作用機序としては、ハトムギの抗菌作用や免疫賦活作用が関与していると考えられています。

4.抗寄生虫

ハトムギはトキソプラズマという寄生虫(Toxoplasma gondi)に対して有効であるという報告があります。しかし、他の寄生虫に関しての研究は見当たりません。

5.抗肥満

ハトムギは脂肪細胞の分化を抑制し、抗肥満効果をもたらすかもしれないという基礎的データがあり、メタボリック症候群改善に期待がもたれています。ハトムギは、米と異なり煮崩れすることはないので、ハトムギを十分噛むことになり、これが少量でも満腹感を得られるという理由にもなっているようです。また、前述したように粳(うるち)の性質を持つことも満腹感をきたす理由にあげられています。我々の簡易調査でもハトムギは本当に腹持ちがよく、満腹感も得られやすい穀物であるようです。さらに、ハトムギはGI値(グリセミック・インデックス値)がかなり低いのが特徴です。GI値が高い白米などの食事を摂取すると血中に糖が急激に増え、インシュリンが過剰に分泌されます。インシュリンには脂肪細胞の分解を抑制する働きがあるので、分泌されすぎると肥満の原因ともなってしまいます。このようにハトムギはダイエット食品の切り札的穀物ですが、きちんとした臨床試験はまだ実施されていないので今後の研究に期待が持たれています。

6.抗糖尿

ハトムギが糖尿病に有効であるとするいくつかの報告がみられます。また、低GI食品ですので、今後の臨床試験に期待が持たれています。

7.抗高脂血症

ハトムギが高脂血症に効果的とする報告がいくつかみられています。しかし、いずれも動物試験によるもので、ヒトでのデータ蓄積が望まれています。

8.こつしょうしょう

最近、ハトムギはマウスの実験において骨粗鬆症に有効であるとする報告がありました。メカニズムとしては、骨を作る細胞である骨芽細胞の増殖促進作用にあると考えられています。

9.肩こり

ハトムギ子実の有用成分の一つであるコイキソール(coixol)は、腰背部痛、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性脊椎症などに用いられているクロルゾキサゾン(chlorzoxazonn)と同じ中枢性の筋弛緩作用を有しているとする報告があります。肩こり改善等に期待がもてる食材とされています。

10.冷え症

ハトムギの子実や子実のみの抽出エキスは中医学的には体を冷やすとされ、冷え症のひどい人には用いにくいとされてきました。台湾など暑さが厳しい国では、ハトムギを使ったアイスや氷水が人気なのはこのせいかもしれません。しかし、我々が90名に行った2重盲検臨床試験によれば、少なくとも殻付ハトムギ熱水抽出エキスであるCRDエキスは冷え症を有意に改善することがわかっています。これはおそらく、ハトムギ外皮に血流を改善する作用があるからと考えられていますが、外皮の数多くある有用成分のうちどの成分が関与しているかについては現在検討中です。したがって、市販のハトムギ茶も冷え症に有効である可能性があると期待されます。ハトムギを食べてハトムギ茶を飲用する、もしくはCRDエキス入りの食品、飲料を摂るといいと考えます。

11.不妊症

司馬遷の「史記」(紀元前1世紀)には、中国最古の王朝であるの建国者であるの母が、ハトムギを愛飲して、を身籠ることができたとの記載がありますが、近年になり、ハトムギの卵胞成熟や排卵を促進する有用成分として、trans-stigmastanolが単離されました。自験例でも、妊娠しづらい2例がCRDエキス摂取中に妊娠した例がありました。

12.月経困難症

ハトムギは月経困難症に効果的という民間伝承が存在していましたが、最近、ハトムギの外殻が子宮収縮を抑制することが報告され、月経困難症に有用な可能性があると推察されています。

12.抗がん

ハトムギの抗腫瘍、がん予防効果については数多くの報告があります。中国ではすでにハトムギの抗がん剤(Kanglaite)が開発され、注射薬や内服薬が数十万人に使用されていますが、使用しているのは子実部分です。さて、外皮中には、天然の抗腫瘍成分がいくつも含まれていることが研究で明らかになってきており、CRDエキスのがん化学予防効果に関する研究が進んでいます。また、扁平上皮領域、なかでも皮膚早期がんに対する作用が獣医師らの協力のもとに検討されています。

13.抗炎症

ハトムギの抗炎症作用については慢性関節リウマチをはじめいくつも報告はみられ、我々も報告しました。また、抗炎症をもたらすいくつかの有効物質(caffeic acid, chlorogenic acid, eriodictyol, ferulic acid, monoolein, trilinolein )もわかっています。

14.抗アレルギー・抗酸化

ハトムギの抗アレルギー・抗酸化作用についても多くの報告がみられています。

15.抗紫外線

ヒト皮膚角化上皮膜貫通型水チャンネルのアクアポリンは紫外線照射時の光老化による皮膚の脱水に関与していますが、Shanらはprotein kinase C とNF-κBの抑制作用のあるハトムギは、aquaporin-3(AQP3)をダウンレギュレートすることにより、抗紫外線効果を発揮すると報告しています。我々も、紫外線B波の照射前後における皮膚の細胞を観察することにより、ハトムギCRDエキスの抗紫外線効果を確認し報告しました。これらは、とくにメラニン色素が欠乏している白色人の皮膚がんの予防につながる可能性もあり、今後の重要研究課題となっています。

16.利尿作用・抗浮腫・腎疾患

ハトムギの利尿作用については古くから知られており、ハトムギ茶でも効果が得られるとされています。利尿作用は足、手、顔などに浮腫がみられる人に顕著に現れ、浮腫が軽減すると利尿作用はみられなくなることから、利尿剤とは異なるメカニズムが考えられます。なお、利尿をもたらす有効物質は、いまだ特定されていません。また、ハトムギは急性・慢性腎炎ネフローゼや腹膜透析患者の治療にも利用されています。さらに、最近ハトムギが腎疾患の悪化要因である線維化の防止に有効である根拠についても報告されています。デスクワークが多い方のむくみや女性で飲酒後の翌朝に化粧ノリの悪い方などにもハトムギがおすすめです。

17.胃腸障害

インドネシアにはJAMU(ジャムウ)と呼ばれる有名な伝統薬がありますが、ハトムギエキスは下痢や胃腸障害に効果があるとされています。また、動物実験では胃壁の保護作用、抗潰瘍作用がみられています。これはハトムギの持つ抗炎症作用や鎮痙作用が関与していると考えられています。このように、わが国では未だ知られていないハトムギの作用がまだまだたくさんあるということです。

18.心臓保護作用

ハトムギの心臓機能保護作用についても報告されています。これは、抗酸化作用と関連しています。

19.痛風、抗高尿酸血症

動物実験で、痛風に対する効果も報告されていますが、人での臨床試験はまだです。

20.尿路結石

獣医師のなかにはハトムギが牛の尿道結石など尿路結石に効果的であるとする考えがあります。これはハトムギの利尿作用や筋弛緩作用によるものかもしれませんが、人での作用については今後の研究を待たねばならないようです。

21.抗良性腫瘍

疣贅も良性腫瘍ですが、ハトムギは様々な良性腫瘍に効果的である可能性が高い天然物といえるでしょう。自験例ですが、人の声帯ポリープが改善した例や犬の出血性大腸ポリープが改善した例があります。通常、良性腫瘍には抗癌剤や放射線治療はほとんど無効です。良性腫瘍では、ホルモン依存性の子宮筋腫や子宮内膜症に伴う卵巣チョコレート嚢腫などにはホルモン剤が有効な場合がありますが、それ以外の良性腫瘍は手術療法しかないのが現状です。ハトムギがどうして様々な良性腫瘍に効果的なのかは科学的には大変興味深いテーマです。今後のさらなる研究が期待されます。

22.牛の脂肪壊死症

人にはない病気ですが、牛には脂肪壊死症という難病があります。昔からこの病気にはハトムギが有効であると数多く報告されていますが、その作用機序については諸説あります。

23.ペットフード

ハトムギCRDエキスの愛玩動物(コンパニオンアニマル、ペット)に対する様々な臨床効果が検討されています。CRDエキスは犬の毛並みを改善し、口内炎を軽減するなど特に皮膚に対する作用が獣医らによって確認されています。その他、疣贅、腫瘍など人とほとんど同じ効用が期待されています。これらの成果を踏まえ、ペット用の栄養補助食品も開発されました。

24.ハトムギの安全性

ハトムギは食品としては極めて安全性が高いと考えられます。ただし、妊娠中のハトムギ食品は原則医師に相談して使用するほうがよいといわれていますが、この点も含め少し解説しましょう。

まず、我々の調べではハトムギのアレルギーは極めて少ないことがわかっています。ハトムギ薬による部分発疹が1件報告されているのみです。このようにアレルギーが極めて少ないのは、ハトムギの抗アレルギー作用と無関係ではないと考えられます。我々は、CRDエキスの安全性試験を実施しましたが、ラットにエキスとして2000mg/kg投与してもなんら問題がないことを確認しており、小核細胞試験等でも異常は認められませんでした。さらに、人臨床試験においても、3倍量摂取試験で問題はみられませんでした。

古来、妊娠初期のハトムギ摂取は流産の危険性があるので、摂取はひかえるべきであるという言い伝えがありました。中国では、一般的に妊娠中は一日のハトムギ摂取を30g以下にした方がよいとしていますが、我々は、流産が誘起されたとすれば、ハトムギに発生したカビ毒(マイコトキシン:mycotoxins)であるergot alkaloidによる子宮収縮作用によるものであると考えています。国産ハトムギは、収穫後に冷蔵サイロで保管するなど管理がしっかりしているので、アフラトキシン産生カビやアスペルギルス族のカビなどが発生しませんが、海外の管理不十分なハトムギからは頻繁にカビが検出されていることが報告されています。CRDエキスの開発者ならびに関係者の医師は産婦人科を専門としていますが、これまで妊娠中に医師監督下で漢方薬であるヨクイニンを投与したことが10例以上ありました。しかし、流産や早産はまったくみられませんでした(未発表データ)。漢方薬として通常成人に用いるヨクイニンエキスは1.0~2.0g/日であり、治療上の有益性が上回る時は医師の判断で妊娠中も投与できるとされています。

Hui-Ping Trengらは、ラットに子実の熱水抽出物であるヨクイニンを0.5g/kg(通常の漢方薬としての常用量の12.5~25倍の高容量)を10日間経口摂取させても、流産率、早産率、胎内死亡率に有意差はみられなかったと報告しています。しかし、1.0g/kg(通常の漢方薬として常用量の25~50倍の超高容量)では、胎児の早期吸収率のみが有意に増加(P<0.05)したと報告し、早産率や胎内死亡率に有意差は認めなかったとしています。彼らは胎児の早期吸収は子宮の収縮に起因すると考察していますが、生殖生理学的に早期吸収と子宮収縮は無関係な現象です。また、実験に用いるハトムギは、カビなど汚染されていないものを使用するべきでしょう。

さらに、最近、篠田らによりハトムギのラットを用いた経ロ投与簡易生殖毒性試験が綿密に行われました。結果は、ハトムギを餌に1.25、 2.5、 5%混ぜて摂取させても、流産率、早産率、奇形率等に有意な差は全く認めませんでした。この実験から、ハトムギは妊娠中少なくとも3.5g/kg/日摂取しても異常は認められないと結論づけられました。つまり、体重50kgの妊婦に換算すると精白ハトムギ粒を一日当たり175g摂取しても問題がないという結果であり、炊いたハトムギでは、一日当たりお茶碗2杯強摂取しても大丈夫ということになります。しいて、収率を考慮した熱水抽出ヨクイニンに換算すると約110gのエキス量となり、通常の漢方薬として常用量の55~110倍の超高容量を妊婦が内服しても問題がなかったことになります。

以上により、ハトムギは度を越えた使用をしない限り、妊娠中でも安全に使用できると考えます。また、ハトムギ茶に関しても同じく安全であると考えています。ただ、ハトムギの人における妊娠中の安全性試験は倫理上不可能ですので、はっきりと安全であるとは言えない面もあります。したがって、妊娠中は念のためハトムギ食品をひかえる方針でいいと思います。もちろん、授乳期のハトムギ食品は問題なく使用できると考えられます。

妊娠中のハトムギエキス薬剤の使用に関しては、薬の添付文書にあるように、きちんと医師に相談して治療の有益性を考えて、内服するのが肝要でしょう。

25.ハトムギの有用成分

我々の調べた限り、ハトムギの有用物質は少なくとも70種類以上はあります。抗炎症、抗酸化、抗がん作用を含め、多機能な成分が続々見つかっており、ハトムギにしかない物質も数多く見つかっています。ハトムギの子実や外皮に含まれる有用成分は、他の穀類をはるかにしのぐ種類の多さとなっており、これがハトムギの多様な機能の説明にもなっています。

わが国では団塊世代も高齢化し、ますます健康長寿を目指す時代になってきました。ハトムギは、女性のみならず男性にもさまざまな恵みをもたらす貴重な食材なのです。

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